富士川町(旧鰍沢町)鹿島の斎藤さんが、奥様と富士川を渡るために
50年ぶりに復元した木製の渡し船の清め式(6月8日)に参加させて頂いた。
昔は、嫁入りの時に、この渡し舟に乗って富士川を渡ったのだという。
斎藤さんは建築家であり、昔造った渡し舟の構造が頭の中に正確に残っている。
今回の渡し舟制作のため、また後世に伝統文化を伝えるために、図面を起こす作業も行ったとのこと。
この渡し船の復元と図面作成は、歴史的、文化的資源の保存という意味合いでも
私たちの地域にとって、大変重要なことであるが、
それ以上に、奥様の想いをかなえるために、私財を投入して舟をつくるという優しさと心意気が
おなじ男性として、かっこよさを感じた。
舟の後方には
江戸後期の浮世絵師、葛飾北斎の
冨嶽三十六景の一つ甲州石班沢(こうしゅうかじかざわ)の絵が彫り込まれていた。
この絵は、旧鰍沢町のシンボル的な絵である。
自分の全精力を注ぎ完成させた舟に、地域のシンボルである絵を彫り込む。
地域の伝統と文化に誇りを持っているという気概が感じられる。
将来私が、愛する人の想いをかなえるためにこのような行動ができるであろうか。
自分の精力を傾けた作品に、自分の名前などではなく、地域のシンボルの絵を彫り込む事ができるであろうか?
男のロマンと心意気。誇るべき郷土愛。
希薄となりつつある、失ってはいけない大切なもの、その原点のひとつを感じさせられた。